そもそも無呼吸症候群ってどんな病気なの？
無呼吸症候群（むこきゅうしょうこうぐん）は、眠っている間に呼吸が何度も止まる病気です。
主に「睡眠時無呼吸症候群（すいみんじむこきゅうしょうこうぐん）」とも呼ばれ、特に眠っている時に喉（のど）の筋肉がゆるんで空気の通り道がふさがり、呼吸が止まります。
例えば、1時間に5回以上、10秒以上の無呼吸が続くと、睡眠時無呼吸と診断されます。
この状態が続くと、睡眠が浅くなり、朝起きても疲れが取れず、日中に強い眠気や集中力の低下が起きます。
さらに、無呼吸症候群は放置すると高血圧や心臓病のリスクも増加するため、早めの治療が大切です。
無呼吸症候群になるとどんなデメリットがある？
無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まってしまう病気です。
この病気が原因で、体や心にさまざまな悪影響が出ることがあります。ここでは、どのようなデメリットがあるか、詳しく説明します。
- 日中の眠気や集中力低下
- 心臓病や高血圧のリスク増加
- 仕事や日常生活への影響
- 生活の質（QOL）の低下
- 家族や周囲への影響
この記事では上記5つのポイントについて解説します。
日中の眠気や集中力低下
無呼吸症候群があると、夜に十分な休息が取れず、浅い眠りが続くため、日中に強い眠気を感じることが多くなります。
例えば、授業中や仕事中に急に眠くなってしまったり、運転中に眠気で集中が切れそうになったりすることがあります。集中力が低下すると、勉強や仕事の効率も落ち、ミスが増えることも。
また、特に車の運転中に眠気が強くなると、事故につながるリスクもあります。日常生活の中での「ぼんやりする時間」が増えてしまい、全体的な生活の質が下がってしまうことが多いです。
心臓病や高血圧のリスク増加
無呼吸症候群は、心臓や血管にも負担をかけるため、心臓病や高血圧のリスクが高まると言われています。
呼吸が止まると、体は酸素が足りなくなるため、脳や心臓が緊張状態になり、血圧が上昇します。この状態が続くことで、慢性的に血圧が高くなる「高血圧」や、心臓に負担がかかって起こる「心臓病」などのリスクが増えるのです。
実際に、無呼吸症候群のある人は、そうでない人に比べて、心臓病の発症率が約2倍高くなると言われています。健康への影響が大きいため、早期の治療が大切です。
仕事や日常生活への影響
日中の眠気や集中力低下が原因で、仕事や学校でのパフォーマンスも下がりがちです。
たとえば、会議や授業に集中できなかったり、忘れ物やミスが増えたりといった問題が生じることがあります。また、イライラしたり気分が落ち込みやすくなったりすることで、仕事仲間や家族との人間関係にも悪影響が出ることが少なくありません。
さらに、思うように活動できないことで、自分に対する自信がなくなったり、やる気が出にくくなるなどの精神的な影響も考えられます。
生活の質（QOL）の低下
無呼吸症候群があると、質の高い睡眠が得られないため、日常生活で感じる活力や幸福感が減少します。
例えば、趣味を楽しんだり、友人と過ごす時間に疲れや眠気を感じやすくなり、「心から楽しむ」という感覚が減ってしまうことがあります。
これが続くと、運動をする気力が失われ、体重が増加することも。生活の質（Quality of Life: QOL）が低下し、日々の満足度が下がるため、充実した生活が送りにくくなります。
家族や周囲への影響
無呼吸症候群は本人だけでなく、周りの人にも影響を及ぼします。
例えば、寝ている間に大きないびきをかくことが多く、同じ部屋で寝ている家族が眠れなくなるケースも少なくありません。また、日中に眠気やイライラが続くと、家庭内でのコミュニケーションが減ったり、衝突が増えたりすることもあります。
家族のサポートが重要である一方で、無呼吸症候群が治療されないと、周囲との関係にも悪影響を与えることがあるのです。
無呼吸症候群の治療法は何がある？
無呼吸症候群の治療法には、生活習慣の見直しから専門的な機器や手術まで、さまざまな方法があります。
ここでは、代表的な治療法を順に説明します。
生活習慣の改善
まず、無呼吸症候群の改善には生活習慣を見直すことが大切です。具体的には、以下のような対策が考えられます。
睡眠姿勢の改善: 仰向けで寝ると舌が喉に落ち込みやすく、無呼吸を引き起こすことがあります。横向きに寝ることで、呼吸がしやすくなります。
禁酒・禁煙: アルコールは筋肉を緩め、喉が閉まりやすくなるため、寝る前の飲酒は避けるようにしましょう。喫煙は気道に炎症を起こし、呼吸がしにくくなる原因になります。
これらの生活習慣を改善することで、無呼吸の症状が軽減されることがありますが、効果には個人差があります。
CPAP療法（持続陽圧呼吸療法）
CPAP（シーパップ）療法は、無呼吸症候群の最も一般的な治療法です。
専用の機械を使い、寝ている間にマスクをつけて、空気を送り込むことで気道を広げ、呼吸が止まらないようにします。例えば、寝ている間に機械が自動で気道に一定の圧力をかけ、気道が閉じるのを防ぎます。
CPAP療法は、重度の無呼吸症候群にも効果的で、多くの患者がこの治療で症状の改善を実感しています。ただし、マスクをつけて寝るため、最初は違和感を感じる人も多いです。
マウスピース治療（口腔内装置）
マウスピース治療では、専用のマウスピースを使って、下あごを少し前に出すことで、気道を広げる効果を狙います。
歯科医院で患者に合わせた装置を作り、寝るときに装着します。
この治療法は、軽度から中等度の無呼吸症候群に適しており、CPAP療法が難しい場合の代替としても使われます。
例えば、CPAPが苦手な人でも、マウスピース治療なら負担が少ないため、続けやすいというメリットがあります。ただし、歯並びや顎関節に問題がある人には向かない場合があります。
手術による治療
手術による治療は、他の治療法では効果がない場合に考慮される選択肢です。喉や鼻の構造を変えて、気道を広げる手術が行われます。
例えば、アデノイドや扁桃腺を取り除いたり、鼻中隔を矯正する手術があります。手術は、根本的な解決を目指せる一方で、リスクや回復期間も伴うため、医師と十分な相談が必要です。
軽度の症状には適さないことも多く、どの手術が適しているかは個別に判断されます。
薬物療法の可能性
薬物療法は、無呼吸症候群そのものを治療するのではなく、症状を軽減するための補助的な方法として使われます。
例えば、鼻づまりがひどくて呼吸がしにくい場合に、鼻詰まりを解消するための薬が処方されることがあります。また、睡眠導入剤が使われる場合もありますが、慎重に管理される必要があります。
薬物療法はあくまで補助的なもので、単独での治療効果は限られているため、他の治療法と併用するのが一般的です。
無呼吸症候群の治療は何科にいけばいい？
無呼吸症候群の治療を受けるには、まず適切な診療科を選ぶことが大切です。
症状や治療法によって、耳鼻咽喉科や呼吸器内科、睡眠専門の外来などで診てもらうことができます。どの科を受診すればいいか、順を追って説明します。
まずは耳鼻咽喉科で診察を受ける
無呼吸症候群の原因が鼻や喉にある場合が多いため、最初に耳鼻咽喉科で診察を受けるのが一般的です。
耳鼻咽喉科では、鼻や喉の形状や状態を詳しく確認し、気道が狭くなっているかどうかを調べます。例えば、鼻の中の仕切りが曲がっていたり、アデノイドが肥大していたりすると、呼吸がしにくくなる原因になります。
もし鼻や喉の異常が見つかれば、必要に応じて治療が行われます。また、耳鼻咽喉科で無呼吸症候群の疑いが強いと判断された場合、専門のクリニックへの紹介状がもらえることもあります。
呼吸器内科での治療が効果的な場合も
呼吸器内科では、肺や呼吸に関する病気全般を診る科です。無呼吸症候群の中でも特に「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれるタイプの治療に対応しています。
ここでは、専用の検査機器を使って、夜間の呼吸状態を測定する「睡眠ポリグラフ検査」が行われることが多いです。検査の結果、気道が閉じやすいと診断された場合には、CPAP（シーパップ）療法といった治療法を提案されることもあります。
また、呼吸器内科では、無呼吸症候群の程度に応じた治療プランを一緒に考えてくれるため、安心して相談できる環境が整っています。
睡眠外来や睡眠専門クリニックの活用
無呼吸症候群を専門的に診てもらいたい場合、睡眠外来や睡眠専門クリニックを利用するのも一つの方法です。
睡眠外来では、無呼吸症候群に限らず、睡眠の問題全般について診療を行っています。ここでは、CPAP療法やマウスピース療法など、個別の治療法について相談することができます。
また、睡眠専門クリニックでは、無呼吸症候群の原因や治療に特化した検査機器や設備が整っているため、詳細な診断と的確な治療プランが得られる可能性が高いです。初めて受診する場合でも、専門的なアドバイスを受けられるため安心です。
内科や循環器科でのサポート
無呼吸症候群は、心臓や血圧にも影響を与えることがあるため、場合によっては内科や循環器科でのサポートも役立ちます。
例えば、無呼吸症候群によって血圧が上がりやすい人は、循環器科で高血圧の治療を受けることができます。
また、内科では、生活習慣の改善指導を行い、無呼吸症候群の予防や改善につなげるサポートも期待できます。無呼吸症候群が引き起こす健康問題について、広い視点で診てもらえるため、無呼吸症候群が進行している人や他の病気を併発している人にとっても重要な診療科です。
紹介状が必要な場合もある
無呼吸症候群の症状が重い場合や、専門的な治療が必要と判断された場合には、最初に受診した病院から専門クリニックへの紹介状が必要になることがあります。
紹介状があると、よりスムーズに専門の診療を受けることができ、検査や治療も迅速に進めやすくなります。例えば、耳鼻咽喉科や内科で初めに受診し、より詳しい治療が求められると分かった場合、睡眠外来や呼吸器内科へと紹介されるケースが多いです。
専門の治療をスムーズに受けられるため、紹介状の存在は無呼吸症候群治療の大きな助けになります。
無呼吸症候群の治療って保険効くの？
無呼吸症候群の治療には、健康保険が適用されるケースが多くあります。例えば、代表的な治療法である「CPAP療法」は、健康保険の対象になるため、自己負担は全体の3割程度です。保険が適用されると、月に1万円ほどで治療を続けることが可能です。
また、病院で行う検査も、保険が適用される場合があります。以下のような治療・検査が保険対象になることが多いです。
マウスピース治療: 無呼吸症候群が軽度から中等度の場合、歯科で作成するマウスピースも保険適用になることがあります。
保険を使うためには、医師から無呼吸症候群と診断を受けることが必要です。自己診断では保険が使えないため、必ず医療機関で診察を受けるようにしましょう。
まとめ
無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まる病気で、放っておくと生活の質や健康に悪影響が出る可能性があります。日中の眠気や集中力低下、心臓病や高血圧のリスク増加など、さまざまなデメリットがあります。
治療には以下の方法があり、症状に応じて選択されます：
CPAP療法：機械を使って寝ている間に気道を広げる方法で、保険適用される場合は月1万円程度の自己負担です。
マウスピース治療：軽度の場合に使われ、歯科で作成します。
手術：気道の構造に問題がある場合には、喉や鼻の手術が行われることもあります。
病院で診断を受ける際は、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、睡眠外来などの診療科で相談できます。また、ほとんどの治療は保険が適用されるため、早めに専門医に相談することが大切です。