睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が何度も止まることで体に大きな負担をかける病気です。放置しておくと日中の眠気や疲労だけでなく、高血圧や心臓病など深刻な健康問題につながることもあります。
その治療に欠かせないのが「CPAP(シーパップ)」と呼ばれる装置です。この機器は気道を広げて呼吸を助け、快適な睡眠をサポートします。
この記事では、CPAPの仕組みやその治療に使うマスクの種類、気になる費用について詳しく解説します。また、CPAP以外の治療法についても触れ、それぞれの特徴やメリットを紹介します。
自分に合った治療法を見つけ、より健康的な生活を送るための参考にしてください!
睡眠時無呼吸症候群の治療で使われる器具とは?
睡眠時無呼吸症候群の治療で最も一般的に使われる器具が「CPAP(シーパップ)」と呼ばれる機械です。CPAPは、就寝中に気道を広げた状態に保つことで、呼吸が止まらないようにサポートします。
この装置は、空気を一定の圧力で送り出し、鼻や口に装着したマスクを通して気道に空気を送り込む仕組みです。CPAP治療は、多くの患者に効果があり、特に重度の睡眠時無呼吸症候群では非常に有効です。
例えば、治療を受けた人の多くが、朝起きたときの疲労感がなくなり、日中の眠気も改善したと感じています。また、心臓病や高血圧のリスクを下げる効果も期待されています。
CPAP装置には、治療中に使うマスクやホースなどの付属品があります。これらは患者の顔に合うように調整されており、快適に使えるよう工夫されています。
最近のCPAP装置は静音性が高く、軽量で使いやすいモデルが増えています。
CPAPにはどんなマスクの種類がある?
CPAP治療では、マスクを使って空気を気道に送り込むことで、呼吸が止まるのを防ぎます。マスクにはいくつかの種類があり、それぞれ形や使い心地が異なります。ここでは代表的な3つのマスクと、選び方のポイントを解説します。
ナザルマスクの特徴
ナザルマスクは、鼻を覆う小型のマスクです。顔に密着する部分が少ないため、軽量で装着感が良いのが特徴です。
特に鼻呼吸が得意な人や、閉所感が苦手な人に向いています。マスクが鼻だけを覆うため、寝返りをしてもズレにくく、安定して使用できるのがメリットです。
例えば、「寝ている間に無意識にマスクを外してしまう」という悩みを持つ人には、このナザルマスクが適している場合があります。ただし、鼻づまりがひどいときや、口呼吸をする人には使いにくいこともあります。
フルフェイスマスクの特徴
フルフェイスマスクは、鼻と口を同時に覆うタイプのマスクです。口呼吸をする人や、鼻づまりがある場合におすすめされます。
顔に接触する部分が多い分、空気が漏れにくいのが特徴です。また、風邪を引いたときやアレルギーの季節でも、安定して使用できる利点があります。
ただし、ナザルマスクに比べると少し重さがあり、初めは装着感に慣れるのに時間がかかる場合があります。長時間の使用に備えて、自分の顔にフィットするサイズを選ぶことが重要です。
ピローマスクの特徴
ピローマスクは、鼻孔に直接小さなチューブ状のパッドを挿入する形のマスクです。非常に軽量で、顔を覆う部分が最小限に抑えられているため、圧迫感が少ないのが特徴です。
特に、横向きで寝ることが多い人に適しています。たとえば、「マスクをしている感じが苦手」という人でも、このピローマスクなら自然に使えることが多いです。
しかし、鼻への直接的な装着になるため、最初は違和感を覚える人もいます。
自分に合ったマスクを選ぶためのポイント
マスクを選ぶ際には、以下のポイントを考慮しましょう。
呼吸のタイプ:口呼吸か鼻呼吸かを確認しましょう。鼻呼吸が得意な人にはナザルマスク、口呼吸の人にはフルフェイスマスクが適しています。
寝る姿勢:横向きで寝る場合は軽量なピローマスク、仰向けで寝る場合はフルフェイスマスクやナザルマスクが快適です。
フィット感:顔の形に合ったものを選ぶことで、空気漏れや不快感を防げます。実際に試着してみるのが理想です。
CPAP治療を快適に続けるためには、自分に合ったマスクを選ぶことが大切です。専門家に相談しながら、最適なものを見つけましょう。
CPAP治療にはいくらかかるの?
CPAP治療を始める際に気になるのが、どれくらいお金がかかるのかという点です。CPAP装置の費用は、購入する場合とレンタルする場合で異なります。
購入の場合、装置自体の価格は15万〜30万円程度ですが、日本では健康保険が適用されることが多いため、自己負担額は3割程度になります。たとえば、20万円の装置なら6万円ほどで購入できる可能性があります。
レンタルの場合は、月々の費用が5000円〜1万円程度が一般的です。保険が適用されると、実際の支払いは月3000円前後になることが多いです。
初期費用を抑えられるため、レンタルを選ぶ人も多いです。また、レンタルでは装置が故障した際に修理や交換が受けられるというメリットもあります。
さらに、CPAP治療を行う場合、定期的な医師の診察が必要です。診察費用も保険が適用される場合が多く、1回あたり2000円〜3000円ほどになることが一般的です。
この診察では、治療効果の確認や装置の調整が行われます。長期的に見ると、購入とレンタルのどちらが安いかは治療期間によって異なります。
たとえば、短期間で終わる場合はレンタルの方が安く済みますが、数年単位で使う場合は購入の方がお得な場合もあります。専門医と相談して、自分に合った選択をすることが大切です。
CPAP治療で睡眠時無呼吸症候群は治るの?
CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群を「完全に治す」治療ではありませんが、症状をコントロールするのに非常に効果的です。CPAPは、眠っている間に気道を広げた状態に保つことで、呼吸が止まるのを防ぎます。
その結果、無呼吸による症状が改善され、睡眠の質が向上します。たとえば、CPAP治療を始める前は、一晩に100回以上呼吸が止まっていた人が、治療を始めたことで正常な呼吸に近い状態を維持できるようになります。
その結果、日中の強い眠気がなくなり、仕事や学業への集中力が向上したというケースが多く報告されています。ただし、CPAP治療を中断すると、症状は再び悪化します。
これは、CPAPが病気そのものを治すのではなく、睡眠中の気道閉塞を防ぐためのサポート装置だからです。そのため、治療を続けることが重要です。
また、睡眠時無呼吸症候群の原因によっては、CPAP以外の治療法を併用することで根本的な改善が見込まれる場合もあります。たとえば、体重が原因の場合は、減量が大きな効果をもたらすことがあります。
CPAP治療は、症状を抑えるのに効果的な治療法ですが、長期間続ける必要があります。専門医と相談しながら、適切な治療を続けることが大切です。
CPAP以外にはどんな治療法があるの?
睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAPだけでなく、症状や原因に応じてさまざまな方法があります。ここでは、マウスピース、体位療法、手術、生活習慣の改善といった治療法についてわかりやすく解説します。
マウスピース(口腔内装置)を使った治療法
マウスピース治療では、寝ている間に装置を口に装着して、舌や下あごを前に固定します。これにより気道が広がり、呼吸が止まるのを防ぎます。
特に、軽度から中程度の睡眠時無呼吸症候群に適している治療法です。例えば、歯科医院でオーダーメイドのマウスピースを作ることが一般的で、費用は保険適用の場合で1万円〜2万円程度です。
この治療法は、CPAPのような装置が苦手な人におすすめされます。ただし、顎に負担を感じる場合があるため、慣れるまでに少し時間がかかることもあります。
体位療法で症状を改善する方法
体位療法は、寝るときの姿勢を変えることで症状を改善する方法です。例えば、仰向けで寝ると気道が閉じやすい人の場合、横向きに寝ることで呼吸が楽になることがあります。
この方法は、軽度の無呼吸症候群の患者に特に効果があります。体位を補助するためのクッションや専用の装置も市販されています。
これらを使うと、自然と横向きの姿勢を保つことができるため、仰向けに寝てしまうのを防げます。この治療法はシンプルで、機器に頼りたくない人に向いています。
外科手術による治療の選択肢
重度の睡眠時無呼吸症候群や、構造的な問題(鼻の中の骨の曲がりや、扁桃腺の肥大など)が原因の場合は、手術が選択肢になります。手術では、気道を広げるために余分な組織を取り除いたり、骨の形を整えたりします。
例えば、扁桃腺を除去する手術は一般的で、手術後に無呼吸の症状が大幅に改善することがあります。ただし、手術にはリスクや回復期間が伴うため、医師とよく相談した上で決める必要があります。
ライフスタイルの見直しによる症状改善
生活習慣を見直すだけでも、無呼吸症候群の症状が軽減されることがあります。例えば、肥満が原因で気道が狭くなっている場合、体重を減らすことで呼吸が楽になります。
また、アルコールや睡眠薬は筋肉を緩め、気道を閉じやすくするため、これらを避けることも効果的です。
さらに、規則正しい生活や十分な睡眠時間を確保することも重要です。こうした日常の努力だけで、軽度の症状であれば大きな改善が見られることがあります。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まることで体に大きな負担をかける病気です。その治療として使われるCPAPは、気道を広げることで呼吸を正常に保ち、質の高い睡眠をサポートします。
CPAPにはさまざまな種類のマスクがあり、ナザルマスク、フルフェイスマスク、ピローマスクなど、自分の顔や寝方に合ったものを選ぶことができます。
治療にかかる費用は、購入の場合で15万〜30万円、レンタルの場合は月々3000円〜1万円程度です。健康保険が適用されることが多いため、費用面の負担も軽減されます。定期的な診察が必要ですが、これは治療の効果を確認し、装置を快適に使うために欠かせません。
また、CPAP治療は症状をコントロールするのに非常に効果的ですが、他にもマウスピースや体位療法、外科手術、生活習慣の改善といった治療法があります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、医師と相談しながら最適な治療法を見つけることが大切です。
CPAP治療や他の方法を取り入れることで、日中の眠気や疲労がなくなり、健康的で快適な生活を取り戻すことができます。早めに治療を始め、長期的な健康を守るために行動しましょう。